こっそり狂言師

あまり狂言と関係ない記事ばかり書いてます。

三浦絞りの件

先日、妻が習っている絞りの先生のところで三浦絞りの先生に習いに行くというので、私もお供させてもらいました。

普通有松絞りは、着物屋がデザインを考えて(というのか元々ある柄とか模様とか)、それを個々の絞りの技術を持っている人(手綱ならこの人とか、蜘蛛手ならこの人、鹿の子ならという風に)に外注します。
それぞれの職人さんが各パーツを絞り上げたら、今度は染屋に出します。
染め上がったらほどいて洗って皺を取り、反物なら仕立てに出します。
そうして出来上がったものが着物屋さんの店先にならびます。
(たぶんこんな感じです。)

この先生はデザインは自分で考えて、絞りはある程度自分のところでやり、最近は染も自分で工房を借りてやるようにしていて、販売も自分でやっています。
なんというかある意味芸術家みたいな仕事です。
さすがにむつかしい絞りは外注だそうですが、それでも簡単なのならひょひょいとやってしまいます。
デザインも斬新で、バラ柄とかひまわりとかはまだしも、ゴリラ柄を見たときはびっくりしました。
色も多色できれいです。

さて、三浦絞りの話に戻りますが、その方はYさんといい、9歳のころから近所のおばさんたちが絞りをやっているのを見て興味を持ち、家に帰って同居していた大工の叔父さん頼んで絞り台をつくってもらって練習していたそうです。
見よう見まねで初めてそのうち職人となり、今は八十ウン歳ということでほぼ八十年近くのキャリアですが、いまだに自分であれこれ悩んだり工夫しては改良を重ねているそうです。

三浦絞りは鹿の子絞りみたいなロの字形の模様が連続するのですが、やり方は鹿の子と逆だそうです。
指でふくらませた生地に絞り糸を回しかけて絞り、絞った生地に絞り台に結び付けたかぎ針みたいな金具の針先をひっかけ、隣の生地を同様に絞っていくのを繰り返します。
基本はロロロロのようにきれいに並ぶのですが、上手じゃないときれいに並びません。
まあ、これをY先生はさっさとやっちゃう訳です。

こんなんだから手間かかるし高くなっちゃう訳なんだろうけど。

Y先生は上記の先生に会うまでは、自分が絞った製品を見たことがなかったそうです。
つまり絞り作業を終えると染屋さんへ渡しちゃって、そのあとはどこでどうできあがって売られているのかわからないからです。
最近になって自分の製品(作品)をみて自信がついたというのが印象的でした。
自分の感覚だと自分の仕事の結果が目に見えないと自己研鑽へ反映できないですけど、昔は分業制だったからそういうことにはならないのかな。
どうやって自分の腕を磨いていたのでしょうか。不思議でした。
なんだか昔の時代の能の稽古方法みたいです。


---------------------------
地元・東海市名古屋市に稽古場を開設いたしました。どなたでも気軽に始められます。見学だけでもけっこうです。ご興味のある方はぜひお越しください。
◆場  所:東海市、または名古屋市
◆日  時:月3回(曜日時間要相談)
◆稽古代 :月額 5,000円
◆持ち物 :動きやすい服装(洋服、和服問いません)で、足袋か靴下持参